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バイト(咬合採得)が命

咬合採得はとても大切だ。
上下の顎の位置関係をピタリと決める。補綴物を作る基準にになるのだからミスは許されない。もしバイトが間違っていたら、どうなるだろう。すべて作り直しだ。作らされる側の気持ちは想像に難くない。例えるなら、地面に穴を掘らされて、終わったと思ったら、ごめん場所が違ったから、埋めて、もう一度右側に掘ってくれる?と言われるようなものだ。

歯科技工士が一番嫌なことのひとつに、コレが上げられる。明らかにおかしなバイト(上下の歯の位置関係を記録したワックスやレジンやシリコンなど)を渡されることが、たまーにある。
そんな時技工士は、一応そのことを伝える。先生バイト大丈夫ですか?
歯科医師は答える。とりあえず何とか作って。
技工士はイヤイヤ作らざるを得ない。

案の定おかしなかみ合わせとなる。ご免、バイト取り直したから作り直して。
かるーく言われて、はらわたが煮えくり返るのだ。だから言っただろ。

それほどまでにバイトは大切だ。

今朝、インプラント症例の上下の模型を咬合器(顎の動きを再現する技工用の器械)に付けて、技工士のY君がやってきた。
先生この症例、咬合確認してください。おかしいんじゃないのかとでも言いたげに差し出す。
バイトはちゃんと調整したのか?私は普段の会話の流れでなんとなく尋ねた。Y君とは何年も一緒に仕事をしている。本当の意味でのパートナーだ。今ではほぼ任せられるほどに信頼している。
見てくださいよ。自分に非はないとでも言いたげに自信を込めて私に突き出した。
・・・見て唖然とした。扱いの基本がなっていない。
Yクンの顔がこわばっていくのが分かった。彼は仕事に対する私の厳しさを嫌と言うほど知っている。
悲しかった。あきれると言うより情けなかった。

Y君は開業して3年ほどした頃紹介で出会った。少し年下のしっかりした腕を持つ技工士を探していた僕とはあまりにタイミングの良い出会いだった。

開業してから、熊本では大手と言われる技工所。老舗と言われる技工所。一番上手いといわれる技工所。色々付き合ってみたが、レベルに不満だったり、コミニュケーションがとりにくいなどの理由で、これと言った出会いに恵まれなかった。技工士を育ててみようかと思っていた矢先、Y君は現れたのだった。

それからと言うもの、事あるごとに話し合い、情報を交換した。かみ合わせの第一人者と言われる先生のセミナーに2人で出かけたり、休みを削って勉強しなおした。高いレベルで一緒に仕事をする為には、ハイレベルの共通認識が必要だ。ときどき問題は発生するものの、いいペースでストレスなく仕事が出来ていた。

ただ悲しかった。

その後、もう一度バイトの調整を再確認してやり直しを命じた。前向きに考えなくてはならない。これでもう一歩二人で高みに上れるはずだ。
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プロフィール

松村まこと

Author:松村まこと
上通り並木坂という比較的街中にアクアデンタルはあります。審美歯科が得意です。歯周病、インプラント、矯正、かみ合わせ治療などを駆使した総合型治療を目指しています。
元歯科技工士で手先の器用さには自信があります。

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