7年間ご苦労様!

大切な仲間が先日去った。
7年と少し前、彼女は、僕の前にあらわれた。職員を増やすための求人に応募してきたのだった。
就職面接だから、ことさらまじめな雰囲気をまとったつもりなのだろうが、残念ながら僕には少し野暮ったく感じた。それでも決して第一印象は悪くなかったし、なにより気持ちの強さのようなものを感じた。ほとんど即決だったと思うが、1週間をまって返事をした。
よく働いてくれた。
持ち前の「負けん気」を発揮して食らいついてきた。
期待の裏返しからだろうか、僕もよく叱った。
彼女の輝くような笑顔がすこし少なくなったかなと、感じたときは遅かった。
仕事をやめたいと言ってきた。
「しまった」と後悔する間も与えず、彼女は不満をぶちまけた。
解決策を提示して、嵐の過ぎるのをまった。
それからは、ちっちゃなトラブルは経験したものの、よくがんばってくれた。
担当患者さんの受けも、すこぶるよかった。
歯科衛生士として、というよりも人としての魅力を僕は重視する。
衛生士のしてのスキルもあったほうがいいに決まっている。
だけど僕は例えばコミュニケーションの能力を高く評価する。
老若男女担当患者さんに支持されていた。
それはおそらく、一生懸命さが伝わっていたからだと思う。
結婚が決まったのは、今から数ヶ月前だった。
人にとって仕事はとても大切なものだが、仕事のためだけに生きているのではないと僕は考えている。
結婚しても仕事を続けたいと、彼女は言ってくれた。単純にうれしかった。
ひと月もしないうちに、フィアンセの県外転勤が決まった。
受け入れるしかなかった。「上げて下ろす」そんな言葉が頭をよぎった。
代わりの新人さんも仲間に加わった。
彼女はすべてを受け継いでもらいたいかのように、懸命に指導した。
平穏な日々が続いたが、ついにその日が来た。
前の日に、花束の準備を忘れていたことに気づき、先輩衛生士のTさんに伝えた。
送り出す側のスタッフは抜かりなく準備してくれていた。
素敵な花束と記念品、そしてアルバム。
僕は職員で仕事以外の行事をあまりしない。
でもそのアルバムをめくると、みんなで行った海外旅行や食事会などが思い起こされるのだった。
最後の日の終礼でスピーチをしてもらった。
職場に対する思いを語ってくれた。
他の衛生士が花束を渡すと、彼女は一瞬顔をゆがめ、そして泣き出した。
たまらず僕は院長室に逃げ込むと、少しして何も無かったかのようにみんなの前に顔を出した。
もうみんな笑顔だった。

スポンサーサイト